第四章 絶対に嘘だ!!

完全に落胆の面持ちで、全検査結果を呼吸器内科に持って行く僕です。これでもう、残すはいよいよ『告知』のみじゃん。まさか、こんなことになるなんて……。頭の中は完全に真っ白です。何も考えられませんでした。絶望のどん底とはまさにこの状態のことでしょ。
呼吸器内科の前に着くと、入り口で一人の白衣の医師がキョロキョロしてるではありませんか。
「どっかで見たことある先生だなー」
と思っていたらその人、一番最初に僕を検査に導いてくださった初診当番の先生ではないですか!しかも!僕を見つけて
「あ!いたいた!気になってたんだよー。ちょっとレントゲン見せて」
って駆け寄ってきた!!
……ちょっと待って。病院さ、すごく忙しそうなんだよ?なのに、そんな初診の僕だけを、なんで気になって探してるの??
僕の絶望感にますます拍車がかかります。
僕の頭の中ではすでに、先ほどの歯切れの良いレントゲン技師の方が、出来上がった僕の写真を見て
「うわ、これはやばい!あまりにヤバ過ぎだから担当の先生に連絡入れとかなきゃ。もしもし、○○先生ですか?さっきの初診の患者さん、かなりヤバイですよアレは。様子見に行ったほうが良いんじゃないですか?」
と、この先生に連絡したまでの様子が完璧に再現されていた。
うわー……そんなにヤバいんだ……マジで……?
レントゲンを取り出し透かし見る先生。
もう駄目だ。もう耐えられない。もう今すぐハッキリと告知されたい。
「先生!」(ガクガクブルブル)
「ん?」
「この、ラムネみたいな白いのは何なんですか!?」(ガクガクブルブル)
「え、これ?」
「そ……それです!」(ガクガクブルブル)
「これ血管!」
答えるタイミングが明らかに早すぎる!絶対に嘘だ!!僕は完全に確信しました。
考えてみれば、医者というものは、もう助からないような重病患者さんに虚偽の診断をしなければいけない場面にも慣れているはずだ(偏見)。ショックを与えないようにとても上手に嘘をつけるものなのだ(超偏見)。テレビで観た。僕は騙されないぞ。
「ふーん、大丈夫そうだなー」
絶対に嘘だ!!むしろ白々しい!!
「じゃあ、僕が検査結果、中の先生に渡しておいてあげるから、待合室で待ってて」
絶対に、その先生と相談するんだ。この深刻な病状について。間違いない。
左肺のラムネがどんどん痛くなる。膝がガクガク震えました。
僕はまるで死刑囚のような気持ちで待合室の椅子に座っていた。