episode12 ドス

僕達のような人間達にとって、今年のバレンタインのプレゼントといえばすべからく、自分で自分に買ってあげるモンスターハンタードス以外にはないだろう。
それはもちろんヒデも同じであーる。
しかも、生粋のハンターであるはずのヒデが予約したのはあろうことか通常版であり、このあたりが現実世界のヒデの『ケチ臭さ』を物語っている。
ヒデはハンターの世界(オフライン)においては『ハンター×ハンター』で例えるところのゴン並みの潜在能力とヒソカ並みの応用能力を併せ持つ、仮面ライダーカブト天道総司と空条丈太郎とがフュージョンしたかのような最強人物であるのだが、
いかんせんドスを購入するあたりはまだもちろん現実世界であり、現実世界のヒデなんて主人公どころか、モンハンGで言えば、手違いで採集された『なぞの骨』に等しい。

だが、ごくたまにだが、このリアルワールドにおいても、最強のハンターとしての彼を垣間見ることの出来る瞬間がおとずれる。僕はこの瞬間を『現実と空想の入り混じる時』などと呼んではいない。

先日、ヒデがある情報を持ってきた。
どうやら、PSPとモンハンポータブルを持っていないとドスで黒ヤンクックとは戦えないらしい。
誰もが、
「じゃあ黒ヤンクックは別にいいよ」
と匙を投げるであろうこの状況、しかもヒデは半端無く貧乏だ。だのに、ヒデはこう言った。
「なんとか頑張ってお金ためてPSP買うよ。だって、嫌じゃん。戦えないのを棚に上げて黒ヤンクックは別にどうでもいいとか言うの。実際に合って話してもいない人に先入観で判断されるのってイヤじゃん。だから俺は、どんなモンスターも、戦ってから判断したいんだ」

すげー格好良かった。
そのときから俺の中で彼は『円盤石』になった。それか『ツタの葉』。

モンスターハンター2(ドス)(通常版)

モンスターハンター2(ドス)(通常版)