クリスマスイヴ

今日はクリスマスイヴだ。もちろんイヴだろうが腹は減る。
とりあえずご飯を炊かなきゃと、炊飯器のスイッチを押したのは二時間ほど前だ。
それから今まで何をしていたのだろう。パーマパビリオンを聞いていたのは覚えている。
ああ、ご飯食べなきゃと気づき、肉を解凍し野菜を切り、手早く炒める。独り暮らしも長くここらへんは慣れたものだ。水溶き片栗粉でとろみをつけたりして。
作りながら、ふと物思いにふけってしまう。
「……今日はクリスマスイヴか」
まだ今年は雪を見ていない。先日の全国的な豪雪はみごとに東京だけを避けていた。
「雪を見ることが出来れば……なにか変わるかもしれないな……」
そんなわけないのは分かっていた。ただの独り言だ。
中華鍋から立ち上る旨そうな香りに、急にすさまじい空腹感を思い出した。ものすごく、腹が減っていたんだ。
「今日は中華丼にしよう」
料理は出来たてを食べるに限る。やっと、食事のことに思考が集中してきた。
そうさ、こんな夜は余計なことを考えるよりも、さっさと腹を満たして寝てしまおう。丼ものにすれば洗物も少なくて済む。ものぐさなのではなく、台所に立つ時間が短いほど余計なことを考えずに済む。
炊飯器を開け、立ち上る蒸気に顔をしかめながら熱々のご飯を丼に盛る。いや、盛りたかった。
そこに2時間保温されていたのは生米だ。
どうやら水を入れていなかったようだ。てことは「といで」すらいねえ。
部屋から聞こえるパーマパビリオン。「なんだこりは 失敗だレイディ……」
今日はクリスマスイヴだ。